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幕の間の出来事36: 山口長男
 


山口長男(1902−1983)は日本を代表する画家の一人で、国内外で高い評価を受けてきました。その作品は東京国立近代美術館をはじめ、国内の近・現代美術コレクションに欠かせませんが、大きな回顧展が近年はないためか、ご存じない方が増えているようで大変残念です。

山口長男の絵は一目でそうとわかるのはなぜでしょうか。1950年代半ば以降の作品は、黒地に黄土色、赤茶色のうちのいずれか1色のみで線や面が描かれています。何十年も同じ色や同じ形と向き合ってうまれた作品のもつ、言葉ではとても言い表せない存在感。それは一人の人間が生涯をかけて示したひとつの道筋でもあるような気がします。

2009年6月7日まで東京国立近代美術館の常設展(3F)にて山口長男《象》が展示されています。

 

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現時代の多角多様で変幻自在の様相は私にとって何の係わりもない異物に見えることがある。これを現状といい文化と認識するならば私はその中に居ないのかも知れない。
この目まぐるしく回転する現代の動きを視る私の眼はコマの心棒に吸込まれてゆく静寂を感じる。
時代をいわず、文化を語らないですんでいた人々の静かな心情を回想する。

何千年前という遺跡が発掘される、何万年前という遺物が発見される。この現実を見聞して私は何を思ったらよいのだろうか。それは私たちから遠く離れた無縁の奇蹟の出現に過ぎないのだろうか。

好事家は趣味と好奇とに満足し、学者は研究の証を得て勇躍するだろう。人間大衆としての私たちには何を見せているだろう。

読人不知というのがある。作者不詳がある。私は何となくそんなことにあこがれる。私は現在の世状を思い比べて見る。非現代人かも知れない。

一粒の種は地に落ちて土壌の中に育まれて苗となり樹と伸び亭々と生い繁る。
その梢を仰ぐときに私は土の中に強大にはびこる根を想う。

山口長男(1972年12月 南画廊個展カタログより)

 

 
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