1946年9月23日、家族の疎開先であった岡山県津山市に生まれるが、生後まもなく東京の谷中に戻り、生涯その地を愛す。1969年東京藝術大学美術学部デザイン科に入学。浪人生活の間にすでに有元は「いいデッサンとは何か」という疑問、古典美術への興味、演技と様式による表現の力、風化の魅力などを強く意識し始める。古典のデッサンを意識的に見るようになり、演技は事実の描写と再現よりも真実に近づきうるという考えに達する。在学中に渡欧した際、イタリアのフレスコ画に強く感銘を受け、その質感や、リアリズムよりも象徴性を重視した発想と描き方などに日本の仏画との共通点を見出し、帰国後に岩絵の具を用いることを決心する。また、有元は音楽をこよなく愛し、「音楽が漂っているような」画面をつくることをめざし、音楽そのものを主題にした作品も数多く制作した。
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