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幕の間の出来事24: 一片の花びら
 


「ある事態を思考することができる」ということは、その事態について、絵を描いてみることができる、ということである。

−ヴィトゲンシュタイン 『論理哲学論』(山元一郎訳)より

 

哲学者のこの言葉は美学に集注されてはいないと思いますが、絵を描くということに関する直接的な言葉のようにも聞こえる気がします。

有元さんは、たとえば一片の花びらから、想像力たくましく物語を膨らませることができるような人であったと有元さんをご存知だった方から伺ったことがあります。たった一枚の花びらに含まれている可能性を考える力、というのは人生を豊かにするかけがえのない力であると思います。

話はとびますが、戦後、梅原龍三郎先生は、日本は戦争には負けたが文化では負けていない、とおっしゃったそうです。そうして戦後も、戦前と変わることなく、むしろより意欲的に作品を発表していきました。そのような思いがあるからこそ、色彩豊かな富士山の絵は力強く鮮やかに輝くのでしょう。

心に響く作品をうみだす画家は、対象やその裏側にあるものに対して深く深く思考することによって作品をつくりあげているのではないでしょうか。

 

 

 
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