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幕の間の出来事06:音楽の漂う画面
 
おおきなうねりのような律動の上に、
かろやかな旋律を花びらのように舞い上がらせ、
個人の感情を表現すると言うより、
もっと大きな小宇宙を構築してみせるようなバロック音楽の魅力。
個性一辺倒の現代に何かやすらぎを見つけた思いがするのです。
                                 
                            「バロック音楽によせて」 1976


有元利夫は音楽をこよなく愛し、鑑賞だけでなく自身でもリコーダーを吹くなどして音楽を楽しみました。また、音楽を主題にした作品を多く残しています。《ロンド》《厳格なカノン》《音楽》《7つの音》《雲のフーガ》《ポリフォニー》など、音楽に関係した用語がタイトルになっている作品もありますし、ヴィヴァルディの『四季』より「春」、という具体的な曲から制作した作品もあります。

音楽の魅力の一つに、抽象性と伝達力の力強さというものがあると思います。音楽というものは目には見えないし、触れない。けれどもそのぶんダイレクトに私たちの中に染み込んでいき、想像力をかきたて、私たちは各々のイメージを創りあげます。人から与えられたイメージではなく自分の中に出来上がったイメージは、何よりもリアリティーがあると思います。有元利夫はそういった音楽の魅力を絵画においても可能にしたいと考えていたのではないでしょうか。


バロック音楽のもつ反リアリズム性、様式性、シンメトリカルで簡素で、それでいて典雅
― そういうすべてが僕にとっては大きな魅力です。
曲の作り方から言っても、決して個性的になろうとはしていない。
ビックリさせようとか、どうだすごいだろう参ったか、というところがない。
なるべく自然に、リズムにしても心臓の鼓動に合わせ、
人間にとって何が心地よいかというところにすっと入ってきて。
僕らを浮き上がらせてくれる。
                                 
                      『有元利夫 女神たち』 美術出版 1981pp.44−45

 
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