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幕の間の出来事03:舞う花びら
 
花は散るから美しいと昔から言われてきましたが、今回のテーマは有元利夫の描く花びらの不思議な魅力について。

有元利夫の作品に舞う花びらはふわふわとした臨場感のある動きとともに、永遠に落ちることはないという静けさがあるように思います。その魅力の不思議を解くことは不可能ですし無意味ですが、有元は「浮遊」ということに対して独特の素敵な考え方を持っていました。

「花びらが降る、というと人によってさまざまなことを連想するでしょうが、僕の絵の場合の降る花舞う花びらは、まさにエクスタシーそのものです。花は、洋の東西を問わずおめでたい歓喜の時に降ってくるものなのです。」
(『有元利夫 女神たち』 美術出版社 1981 p120)

有元にとって「エクスタシー」とは性的な意味というより「いい気持ちというか最高の絶対的快感。至福感」という意味でした。有元は嬉しい時の気持を表す「天にも昇る気持」という言いまわしを好みました。それはどんな"知的"な言葉や"文学的"表現よりも人間が嬉しい時の気持を表し、多くの人間が実感を持って理解できるその「通俗」性は、日常生活や人間そのものに根ざした表現であると考えていたからのようでした。

人のそういう「天にも昇る気持」になった時の感情を説明したり分析したりするのではなく、有元は画面という「天」に、浮遊する花びら、トランプ、玉や人を描くことによって表現したようです。現実の世界では花びらは舞えば落ちる運命にあります。だからこそ、そんな気持がそこではいつまでも続くようにと、有元の花びらは舞ったまま落ちていかないのではないでしょうか。

 
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